めっきとは何?めっきの豆知識やめっきに関する用語を解説

めっきや、めっきに関する豆知識をご紹介します。めっきは、地球に初めて文明が栄えた頃から存在している表面加工技術です。日本には中国を通じて仏教と共に伝わったと言われています。現在、めっきは装飾目的のほか、めっきの対象物が本来持つことのない機能を対象物に付与する目的などで使用されています。

めっきの豆知識

メッキ加工

めっきは、地球に初めて文明が栄えた頃に誕生した表面加工技術で、それ以降、技術的な進化を遂げながら、常に人類と歩んできました。日本には古墳時代に中国から伝わったと言われています。古墳からは青銅器をはじめとするめっきが施された製品のほか、めっきの作業に使ったと考えられる痕跡も見つかっています。基本的なめっきの考え方は、昔も今も変わりませんが、技術は当然、飛躍的な進歩を遂げ、我々はさまざまな種類のめっきを、用途に合わせて使い分けています。これからめっきの豆知識や、めっきに関連する用語についてご紹介していきます。とても深いめっきの世界にようこそ。

めっきとは

めっきとは、金属、もしくは金属以外のめっき対象物の表面に、金属でできた薄い膜を付ける表面加工技術です。めっきは「メッキ」とカタカナで書かれることが多く、海外の言葉だと思っている方も多いようですが、れっきとした日本語です。日本ではめっきのことを古くは「滅金(めっきん)」と呼んでいましたが、時を重ねるうちにめっきへと変化していったものと考えられています。
表面加工技術であるめっきは、さまざまな用途で使われますが、代表的な用途は「装飾」「機能性の追加」「防食」「表面硬化」などです。身の回りにはクロムメッキをはじめとするめっき製品がたくさんありますが、意外に忘れがちなめっき製品が、鉄にスズがめっきされた「ブリキ」、鉄に亜鉛がめっきされた「トタン」です。
めっきの方法は大きく「湿式めっき法」と「乾式めっき法」に分けられます。湿式めっき法は、水溶液を使用するめっきの方法で、この中にもバリエーションがあります。乾式めっき法は、水溶液を使用せず、真空状態などの環境でめっきする方法です。乾式にも湿式同様、バリエーションがあります。

装飾めっき

装飾めっきは、装飾のために用いられるめっきの方法で、めっきの業界で装飾めっきと呼ぶ場合、多くは「装飾クロムメッキ」で加工することを表します。アクセサリーのほか、さまざまな製品を、魅力的なメタリックカラーで飾ります。ただ、装飾めっきの役割は見た目を良くするだけではありません。防錆効果、防菌効果、コスト削減、軽量化などの目的も併せ持っています。

機能性の追加

めっきの目的の一つに機能の追加があります。これはめっきする素材が持っていない機能を、めっきすることにより付加するものです。「電気的」「物理的」「機械的」「化学的」「光的」「熱的」といった機能を対象物表面に追加します。

防食効果

めっきを施すことで、水分などの腐食の原因となる物質から守ります。

表面硬化

表面硬化は、外部からの衝撃、摩擦に対する抵抗力を付けるために金属の表面を硬くすることです。ただし、硬く丈夫になればいいのかというとそれだけではなく、潤滑性や耐疲労性といった機能も同時に持たせなければなりません。

湿式めっき法

湿式めっき法は、金属の溶けこんだ水溶液の中で行うめっきの方法です。湿式めっきは、さらに「電気めっき(電解めっき)」と「無電解めっき(化学めっき)」に分けられます。電気めっきでは、水溶液の中に設置しためっき対象物に電流を流し、表面処理を行います。そのため、めっき対象物は導電性を持つ物体に限られます。無電解めっきでは、水溶液の中にめっき対象物を入れ、還元剤による化学反応を利用して、対象物表面にめっきします。

乾式めっき法

乾式めっきは、真空状態、もしくは気体の中でめっきする方法です。乾式めっきは、大きく「物理蒸着」と「化学蒸着」に分けられ、これらは湿式めっきと比較するとかなり新しいめっき方法です。めっきする金属は気体として噴射されるため、設備の大型化は避けられず、この辺りはデメリットだと言えるかもしれません。

バレルめっき

バレルめっきは、主にネジなどの小型パーツをめっきする際に使われる設備のことです。バレルには、めっき液を出入りさせるための小さな穴が開けられていて、アクリルやPPなどで作られています。めっきの対象物はバレルの中に投入し、ムラが出ないようにバレルを回転させながら作業を進めていきます。バレルにもさまざまな形があり、通常はめっきを施す製品に合わせて使い分けます。バレルめっきは、ラック掛けによるめっきが難しい小物に最適なめっきの方法です。

ラック掛け

ラック掛けは、めっき対象物に電流を流すための仕組みです。引っかけ、ジグ、ハンガー、タコなどと呼ばれる場合もあります。

金属が錆びる理由

多くの金属は、酸素や水の影響で錆びます。錆びる金属の代表格は「鉄」ですが、鉄は元々錆びているのです。このように書くと何かおかしく感じますが、鉄が自然界に存在している状態では通常、錆びているのです。錆びている状態のほうが、鉄にとっては安定した状態なのです。そのため、鉄が錆びることは自然なことなのです。ちなみに「金」は自然界に存在している状態でも錆びていません。金は酸素や水に対する強い安定性を持っているのです。

古くから存在するめっきの技術

めっきの技術が生まれたのは今から約3000年前、黒海の北にあるスキタイ地方で生まれたとされています。また、メソポタミア文明においても水銀法と呼ばれるめっき法が使われていて、めっきの技術はその後、シルクロードを通り中国へともたらされ、中国と交流していた日本へも伝わったのです。日本にめっきが伝わったのは4世紀頃のこととされ、当時の古墳からはめっきされていたと見られる青銅器などが見つかっています。また、日本では大仏の塗装にもめっきが使われました。アマルガムという水銀と金を混合した物質を対象物の表面に塗り、熱することで水銀を蒸発させて金だけを表面に残すめっきの手法です。ただ、この方法は有毒なガスを発生させるため、現在は行われていません。奈良の大仏様における作業でも、相当な数の作業員が中毒になったのではないかと考えられています。

バグダッド電池

イラクのバグダッド郊外で見つかった「バグダッド電池」は、電気めっきに使われたと考えられている、壺のような形状の電池です。約2000年前のものとされるバグダッド電池は、古代パルティア人が製造したものとされ、装飾品などのめっきに使われたのではないかという説があります。しかし、これは確認されたわけではありません。最初に電気めっきが行われたのは、19世紀初頭にイタリアの発明家が行ったものとするのが定説です。

オリンピックのメダル

オリンピックの金メダルはめっきされています。オリンピックで金メダルを獲得するということは、この上ない名誉ではありますが、だからといってメダルすべてを金で作ってしまってはたいへんなお金がかかってしまうでしょう。オリンピックの金メダルには少量の純金が使用されています。ちなみに銀メダルと銅メダルは、ピュアな銀と銅がそれぞれ使われていて、金メダルは銀メダルを金めっきしたものです。
めっきに関する豆知識や用語についてご紹介してきました。めっきは歴史ある、深い世界です。めっき製品を見かけたら、時にはその歴史と奥深さに思いを馳せてみてはいかがでしょうか?